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Text File  |  2000-07-11  |  17KB  |  494 lines

  1. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  2.  
  3.  %V%Wまったくあてにならない
  4.  
  5.  %V%W「非」実践的ゲーム制作講座  第2撃
  6.  
  7.  
  8.                             あいはら てつや
  9. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  10.  
  11.  
  12.  %V%Wゲームを分解する
  13.  
  14.  
  15.  分解するといっても、本体をばらしてMODチップをつけるとか、そういう話
  16.  
  17. ではなく、ゲームという遊びがどのような要素から成り立っているのかというこ
  18.  
  19. とを分析的に見ておこう、ということだ。ゲームをつくるときには、どんなゲー
  20.  
  21. ムをつくるのかという目標をかなり具体的に立てておかないといけない場面に直
  22.  
  23. 面するだろう。既存のゲームを参考にして同じ振る舞いをするようにコード化す
  24.  
  25. るだけなら、まるで必要のない話ではあるが、いちからゲームを作るとなれば、
  26.  
  27. 何をどうゲームにするのか、必要な処理は何か、といったところを一通りは押さ
  28.  
  29. えておかないと、破綻するケースはとても多いだろう。プログラムとしては動い
  30.  
  31. ているが、作った自分もおもしろくない、と感じてしまう事もある。また、破綻
  32.  
  33. 以前の問題というか、どこから手をつけてやればいいのか、やることがさっぱり
  34.  
  35. 見えなくて、どうして良いかわからずに、画面の前で固まってしまっていないだ
  36.  
  37. ろうか。そういう人でも、ゲームは作れるはずだし、そのためにはやはり何か事
  38.  
  39. 前に考えるべきことがあるのだ、と仮定しよう。
  40.  
  41.  
  42.  さて、キーボードを前にして固まらずにゲームをつくる時、先史時代のいにし
  43.  
  44. えから「ピコゲー」から入ろう、という究極の題目が唱えられている。それはま
  45.  
  46. た大きなひとつの真理を体現した格言だったと思う。Oh!Xもそうだったし、イカ
  47.  
  48. Pにしてもまず、できるところから、簡単なものから作ってみよう、というのが
  49.  
  50. 推奨されてきた。無論それはそれでよいのだが、ピコゲーづくりから学べること
  51.  
  52. というのはおのずと限られる。動いた感動はモチベーションにはなるだろうが、
  53.  
  54. それ以上ではないのだ。個人でできる範囲で、小さいながらも「面白いゲームだ
  55.  
  56. ね」と言ってもらえるモノを作る事を目標に考えた場合、それだけではすまなく
  57.  
  58. なる。だから、大いに固まってくれていいのだと思う。電脳倶楽部に投稿が来な
  59.  
  60. くなったりするとけっこう困ったりしたので「とにかく作れ」的なすすめ方もあっ
  61.  
  62. たと思うが、これからは基本的には自立してやっていかなければならないわけで、
  63.  
  64. おもしろいと思えるまでとことん作る、というのもありなのではないだろうか?
  65.  
  66. もっとも、期限がないと物事は進まないというのも人情なのでどちらが良いといっ
  67.  
  68. たものではないのだが。ある程度、目標を定めるために決めごとをするくらいの
  69.  
  70. 時間はたっぷりとったら良いのではなかろうか。
  71.  
  72.  
  73.  なにをどうつくれば面白くなるのか? 手探りするしかないのか? 作ったも
  74.  
  75. のが面白いかどうかは、時の運なのか? 電クラやWEBで、作品に対してのコメ
  76.  
  77. ントを参考にして改良するだけでいいのか? 考えこんでいてもしかたないから
  78.  
  79. 手を動かせ、というのも楽観主義者のひとつの結論だが、考え込んでしまってい
  80.  
  81. る時間を有効にすることは、可能だろうか?
  82.  
  83.  そもそものところで、ゲームがなぜゲームとして成立しているのか、ゲームを
  84.  
  85. 面白いと感じるのはなぜかという、大切なんだけれども漠然とした問いへは、た
  86.  
  87. いてい漠然とした答えしか返ってこない。制作する上で納得できたり参考になる
  88.  
  89. ような「膝ポンものの話」というのが、なかなかないのもまた真なり、といった
  90.  
  91. ところではないか。
  92.  
  93.  
  94.  ここでは、上のような問いに対して、ゲームを構成する要素を還元し、その上
  95.  
  96. で、筋道をつけるための考察をすることを試みる。
  97.  
  98.  
  99.  では、さっそくばらそうか。ヒヒヒ。あ、いや違った。ゴックン。
  100.  
  101.  
  102.  「遊ぶ者(複数でも可)」が居る。遊ぶ者、つまりプレイヤーは、ゲームの中
  103.  
  104. にある決まりに従って、そのゲームにかかわる主体である。と、ここまで書いて、
  105.  
  106. 「主体」「決まり」が出てきた。あまりにも自明なので、なんの前フリもなく導
  107.  
  108. 入したが、いいだろうか。決まり、つまりはルールである。ルールは、通常は客
  109.  
  110. 観性をもった判定器である。主体は状況に関わるアクションを起こし、それに対
  111.  
  112. してルールは客観的な判定を行い、結果を主体に明示する。必要に応じてこれを
  113.  
  114. 繰り返す。これが一番単純なゲームの流れである。で、このように見ていくのが、
  115.  
  116. いわゆる社会学的な「ゲーム理論」の前提であり、主にシミュレーションや事象
  117.  
  118. 分析を単純化する上では、こうしたやり方でモデルを作る。が、これはビデオゲ
  119.  
  120. ームのおもしろさとは直接的には何の関わりもないことに注意しておこう。しか
  121.  
  122. し、プログラムというものは、必ずこういう基本構造を持っているはずだ、とい
  123.  
  124. う事は押さえておこう。
  125.  
  126.  
  127.  たとえば、簡単なじゃんけんプログラムがある。主体は人間だが、プログラム
  128.  
  129. でやる場合、「じゃんけんの相手」としてのコードが必要だ。ここではなにも難
  130.  
  131. しく考えることはなく、グーチョキパーを出すためのルーチンである。一番簡単
  132.  
  133. なのは、乱数でどれかを出すようにしておいて、それを判定ルーチンに送ってや
  134.  
  135. る。人間側も、なんらかの入力装置を使ってグーチョキパーのどれかを判定器に
  136.  
  137. 送る。判定器はそれを画面に出力してやればよい。と、だいたい人間の入力処理、
  138.  
  139. 対戦相手になるコンピュータの入力処理(ここでは乱数発生だけだが)、判定処
  140.  
  141. 理、結果出力処理、と4つの処理を順次滞りなく行われるようにすればよい。
  142.  
  143.  
  144.  ここで、何回もじゃんけんさせてやりたければ、この4つを順次行うメインル
  145.  
  146. ープを作っておけばよい事になる。このくらい単純だと、ルーチンが膨大になっ
  147.  
  148. たり、分けて行うほどの処理量ではないのだが、実際のゲームというゲームのプ
  149.  
  150. ログラムでは絶えず、こんな処理が行われることで動作する。また、じゃんけん
  151.  
  152. を何回も行わせるならば、相手の次の手を予測する、というアイデアを入れるこ
  153.  
  154. ともできるだろう。無論それに意味があるかなど、考えないでほしい。単純な統
  155.  
  156. 計を導入しただけではほとんど意味のない結果になると思われる。が、こうした
  157.  
  158. 処理をさせたいならば、どこでその処理を分担させるかが問題である。つまり、
  159.  
  160. この場合は、コンピュータ側の入力部分で、次の手を予測する処理を分担させれ
  161.  
  162. ばよいことになる。無論、人間側の過去の手をどこかの変数に取っておいて、そ
  163.  
  164. れを参照して一定の結論が出せるようにしなければならないから、人間の入力処
  165.  
  166. 理部分の結果を、絶えず格納して参照できるようにしておかなければならない。
  167.  
  168. が、処理をどこでやるかを間違えないように注意しなければならない。
  169.  
  170.  
  171.  じゃんけんの過去データというのは、オープンにしておいてもかまわない情報
  172.  
  173. だから、グローバルな変数でいいだろう。そして、いつ変数を格納するか、とい
  174.  
  175. う点では、勝敗の判定時に持っているデータを流用することになるだろう。つま
  176.  
  177. り、判定処理の直後に行えばよいことがわかる。コンピュータの手を決定する処
  178.  
  179. 理のときに参照できるようになっていればよいのだが、その前段にもってくるわ
  180.  
  181. けにはいかない。現時点の人間の手まで参照するのはアンフェアである(大差は
  182.  
  183. ないが、1度目の対戦では、現時点の手だけしか統計データがないわけで、その
  184.  
  185. 勝負は、必ずコンピュータが勝ってしまうことになる)。
  186.  
  187.  
  188.  単純な手の類推以外にもなにかやらせようとする場合、つまり、過去10回ど
  189.  
  190. っちが勝ったか、とかトータル勝敗数をデータとして参考にしたい、または、相
  191.  
  192. 手の出す手の傾向を分析する、という処理を加えたくなったとしたらどうしよう。
  193.  
  194.  
  195.  この場合でも、結果格納処理を追加するなら判定後、表示までの間ということ
  196.  
  197. になる。ここに処理を書き加えることで、いろいろなデータを総合したじゃんけ
  198.  
  199. ん対戦プログラムになり、また結果表示の時にも、他の変数データベースを使っ
  200.  
  201. た、擬人化表示もできるようになる。つまり、「負けこんでいるな」とか、「あ
  202.  
  203. んた弱いね」といったケースを設定して、そのデータを照合してやれば、キャラ
  204.  
  205. ものの表情とせりふをつける、なんて事もできる。タイマを使ってタイミングを
  206.  
  207. 計れば、遅出しの判定だってできる。
  208.  
  209.  
  210.  と、ここまでじゃんけんゲームについてプログラム化する事を検討するべく、
  211.  
  212. 分解してきたが、はて、これって本当におもしろくなるだろうか? と立ち止まっ
  213.  
  214. てしまおう。実は、この程度ではたいしておもしろいものにはならないのではな
  215.  
  216. いか? ばらした時計は組み立てるのが難しい。分解して、いろいろと要素に還
  217.  
  218. 元して、このネジはなんだろうか、とかこのバネは云々…、と観察する事は比較
  219.  
  220. 的簡単だ。しかしここで、こうした疑問が出た以上、ばらしただけではわからな
  221.  
  222. いじゃんけんの要素というものをもう一度考えてみる必要がある。人間と人間が
  223.  
  224. じゃんけんするシチュエーションを考えるのだ。じゃんけんには、地方地方でも
  225.  
  226. いろんなかけ声があるし、手を出すタイミングも微妙に違っていたりする。そう、
  227.  
  228. かけ声のタイミングも、じゃんけんというゲームの大きな要素なのだ。たとえば、
  229.  
  230. 「さいしょはぐー」などと呼吸を整えることで公平を期するところもあれば、相
  231.  
  232. 手の顔をみただけで、腕をまわしていきなり「じゃんけんぽん」とやるところも
  233.  
  234. ある。この場合は鼓弓が読めず遅出しした方は負けだろう。また「あいこでしょ」
  235.  
  236. とタイミングを計るところもあれば、「あいこで」をすっとばして、あいこなら
  237.  
  238. ば間髪をいれずに「しょ」「しょ」「しょ」というタイミングで次の手をくり出
  239.  
  240. すところもある。あいこばかりのときには、いったん仕切り直しをする場合もあ
  241.  
  242. るし、そういうのは、相手との呼吸で行われる。
  243.  
  244.  重要な(子供にとっては真剣勝負のときなど)勝負の場合、あいこだからといっ
  245.  
  246. て、連続して勝負しない事もある。常に相手の顔を見ながら次の手を予測して、
  247.  
  248. 1回づつ時間を掛けてじゃんけんする、といった場合もあるだろう。自分が子供
  249.  
  250. の頃、どんな風に遊んだかを思い出してみれば、単に確率だけではなく、意外性
  251.  
  252. と、読みというなかなか複雑な要素をもったモノだ、という事が想起されるので
  253.  
  254. はないだろうか。ここまでくると、単純に要素還元するだけでは、じゃんけんゲ
  255.  
  256. ームは作れない、という事が見えてくる。
  257.  
  258.  
  259.  ただ、ここまでで漠然とつかめるのは、「じゃんけんを続けていると、いろい
  260.  
  261. ろな要素が絡まってくる事でヒートアップする事もある」という事だ。たとえば、
  262.  
  263. 高度なじゃんけんゲームとして、ウォーシミュレーションゲームがある。ひとつ
  264.  
  265. ひとつの勝負(判断)や相手の作戦を読む事の積み重ねで、全体の局面が大きく
  266.  
  267. 変わってくる。主体の関わり方の巧拙次第で、トータルでの勝利や敗北が決まる。
  268.  
  269. こういうゲームは、たくさんの要因が、勝敗に関わっているために、容易にはど
  270.  
  271. のアクションが直接の勝敗の原因であるか、特定する事は難しいだろう。また、
  272.  
  273. 単に勝った時の手順を追っていっただけでは、必勝法にはなかなかたどり着かな
  274.  
  275. い。数をこなせば、ある程度は傾向が見えてきたりするので、何度も勝つことが
  276.  
  277. できるようになるだろうが、そもそも、あまりにパターン化した必勝法がわかっ
  278.  
  279. ているゲームなんて、果たしておもしろいだろうか? といった疑問も出てくる
  280.  
  281. だろう。このあたりにひとつ、「ゲームのおもしろさ」の片鱗をみる事ができる
  282.  
  283. だろう。
  284.  
  285.  
  286.  さて、多少脱線しつつ、もう一つ疑問が浮上してきたが、じゃんけんそのもの
  287.  
  288. に戻ってみよう。じゃんけんゲームはコンピュータ上で果たしておもしろく作る
  289.  
  290. ことができるかどうか、というところに戻そう。実際には、じゃんけんだけでは
  291.  
  292. おもしろくなる事は皆無といっていいだろう。勝負は一瞬であり、他のゲームの
  293.  
  294. ように、たくさんの要因が勝敗に関わる、なんて部分は、プログラムし得ない。
  295.  
  296.  
  297.  じゃんけんを利用した、野球拳なる遊びがある。これは、負けた方がどんどん
  298.  
  299. 脱いでいくという、リスクを伴った遊びであり、また途中の駆け引きといった要
  300.  
  301. 素もある。およそ、コンピュータゲームないしビデオゲームでじゃんけんをメイ
  302.  
  303. ンに使ったゲームというのは、野球拳くらいのものだろう。後はとっさには思い
  304.  
  305. 浮かばない。が、野球拳なんてのは、相手もこっちも等価のリスクをしょってい
  306.  
  307. るからこそ、遊びとしておもしろい(かもしれない、実際の野球拳はやったこと
  308.  
  309. がないからなあ)のであって、画面上の婦女子や漢(のはあるか知らないが…)
  310.  
  311. を脱がせるだけでは、たいしておもしろいものではない。どんな画像が入ってい
  312.  
  313. るかわからない野球拳ソフトを買ってくることやアーケードでコインを投入する
  314.  
  315. 事そのものがリスクじゃあ、というか、賭けだ、という見方もできなくはないの
  316.  
  317. だが、ナニもそこまでしなくてもいいじゃないか、という気になるのが普通だろ
  318.  
  319. う。そのあたりは、ゲームのおもしろさとは別のおもしろさであろう。さらに、
  320.  
  321. 脱衣をキーワードにするなら麻雀の方が、ゲームの達成感という点ではおもしろ
  322.  
  323. いだろう。もっとも、これはゲームプログラムのおもしろさより、麻雀というゲ
  324.  
  325. ームそのもののおもしろさによるところが大きい。それはプログラムの中にイン
  326.  
  327. チキが入ったものだとしても、手作り役作りをして相手の捨て牌を読むという、
  328.  
  329. 複雑な麻雀のおもしろさが、ある程度はあるし、安易には勝てない設定になって
  330.  
  331. いるから、勝ったときはそれなりの充実感があり、そこに婦女子のあられもない
  332.  
  333. 姿を見せられれば、たのしくないと感じない方がどうかしている(いや、ちっと
  334.  
  335. 偏見入った上に女性差別ですね、これは)。この脱衣麻雀の成功具合は、一時期
  336.  
  337. のブームを考えれば、安易だが堅いなにかを持っている、という事だろう。ビデ
  338.  
  339. オゲーム野球拳のような無味乾燥で達成感の少ないゲームよりは、よほど達成感
  340.  
  341. があるだろう。無論、程度の差でしかないのだが。脱衣麻雀自体、あきられるの
  342.  
  343. も早かったが、それなりにシリーズは続いている。
  344.  
  345.  
  346.  というわけで、じゃんけんを如何におもしろいゲームに仕立てるか、というの
  347.  
  348. は、このような考えを適当に煙草をふかしながら巡らせた時点で、「じゃんけん
  349.  
  350. がゲームのメインでは無理」という結論が私の中では出た(いや、面白いじゃん
  351.  
  352. けんゲームがつくれるなら、見てみたいモノだが)。
  353.  
  354.  
  355.  しかし、じゃんけんのような単純なもの以外にも、こうした結論が出てしまう
  356.  
  357. ケースは結構あるのではないだろうか? とすれば逆に、ここをこうすれば、ちゃ
  358.  
  359. んとおもしろいゲームになるかもしれない、などという分析も、あらかじめして
  360.  
  361. おくことは可能なのではないだろうか。もっとも、成功例の分析をもっときちん
  362.  
  363. としなければ、確かめられないわけだが。
  364.  
  365.  
  366.  さて、ここで別のゲームを取り上げてみることにしよう。古典的作品「インベ
  367.  
  368. ーダー」だ。宇宙から徐々に降下してくるインベーダーの大群を、1基の砲台で
  369.  
  370. 打ち落とそうとするという、よく考えれば、そんなモン1基で防ぎきれるわけな
  371.  
  372. いだろう! NMDも最近また失敗したし~。という非現実的な内容(?)のゲ
  373.  
  374. ームだ。アーケードでは、必ず、なんらかのゲームオーバーになってもらわない
  375.  
  376. といけないので、砲台が3基撃ち落とされたらおわり、となっている。現代なら、
  377.  
  378. 規定の敵を倒したら、全面クリアのゲームオーバー、という状態があるのが一般
  379.  
  380. 化しているが、インベーダーの頃には、そんな実装はなかった。100円で何時間
  381.  
  382. もやり続けるようなヘビィなプレイヤーも居た。
  383.  
  384.  
  385.  しかし、なんであんなにインベーダーというゲームがブームになったのだろう
  386.  
  387. か。ブーム自体の考察はここではしないが、やはり、当時の人をおもしろがらせ
  388.  
  389. るなにかがあった事は間違いない。もちろん、それまでになかった物珍しさもあ
  390.  
  391. っただろうが。
  392.  
  393.  
  394.  ということで当時現役で遊んでいた人は、あれこれ考えてみていただきたいと
  395.  
  396. ころだ。
  397.  
  398.  
  399.  インベーダーというのは、単純化すると、的が移動する「射的」だ。ねらった
  400.  
  401. 的に的確に当てることでゲームは進行する。射的の場合は、当たってモノが倒れ
  402.  
  403. たらそれが自分のモノになるというおまけ付きだ。それはさておき、射的のおも
  404.  
  405. しろさというのは根元的なもので、あまりなぜおもしろいかを詮索しても始まら
  406.  
  407. ない。強いていうなら、射的とは射撃のコピーであり、射撃の前身は弓矢であり、
  408.  
  409. 狩猟すなわち生きる糧を得るための手段であり、生命維持であり、従って人間に
  410.  
  411. とって根元的な欲求と快楽にリンクしたものなのである、と。いまだに、ミサイ
  412.  
  413. ルをミサイルで撃ち落とすという熱狂にかられた「コメリカ」((c)ズオウ・リ
  414.  
  415. アキさん)みたいな国もあるわけだし。「撃ち落とすって、楽しいなあ?」のか
  416.  
  417. もしれないなあ。いや、閑話休題。
  418.  
  419.  
  420.  それまで、「シューティング」というビデオゲーム自体がなかったわけだから、
  421.  
  422. 弾が打てる敵が消えるだけで楽しかったのだ。しかし、現代において、単にシュ
  423.  
  424. ーティングならばすべからくおもしろいか、というとそういう事はまったくない
  425.  
  426. わけで、そうした場合、新しいおもしろさがない、であるとか、阻害する要因が
  427.  
  428. ある、という事になろうし、弾を撃って敵を倒す、単純なおもしろさの上に何を
  429.  
  430. 積み上げ、何を加えたらおもしろくなるのか、という事を事前に検討しておくべ
  431.  
  432. きだろう。
  433.  
  434.  
  435.  ただ、この場合、なにをどう検討すりゃいいんだ、ということになると思われ
  436.  
  437. る。が、特に枯れたジャンルである事は注意したい。どんなフィーチャーを加え
  438.  
  439. るにしろ、現状を見る限りシューティングゲームで遊ぶプレイヤは「かなりヘビ
  440.  
  441. ィなシューティングマニア」しか残っていないわけで、生半可なことでは「おも
  442.  
  443. しろい」といわせる事が難しいという事だ。もちろん、ゲームを知り尽くしたこ
  444.  
  445. だわりのプログラマである事も多い。そういう点ではおそらく、おもしろく作る
  446.  
  447. 上で一番難しいのがシューティングだろう。それでもシューティングマニアは、
  448.  
  449. 少ないながらも、読者の中にも、編集部の中にもいたので、「とりあえずプレイ
  450.  
  451. してくれる」人はいたわけで、それはそれでいいのだが。しかし、これからは、
  452.  
  453. 電脳倶楽部という媒体はなくなるわけで、大方はシューティングに見向きもしな
  454.  
  455. い層だ。特に、人間には「刺激に対する慣れ」というものがあって、とにかくず
  456.  
  457. ーっと同じ刺激では、同じ快楽が得られない、というのはちょっと考えれば誰で
  458.  
  459. も思い当たるだろう。人間てのは、そういう風にできているのだ。シューティン
  460.  
  461. グというのは、一番古くからあるジャンルだけに、色々な人から「おもしろい」
  462.  
  463. といってもらうのは、なかなか難しいのである。
  464.  
  465.  
  466.  とはいえ、リアルタイムゲームの一番の基礎となるものだから、サンプルでい
  467.  
  468. いので、一度は作っておかねばならないものでもあるし、これから継続してシュ
  469.  
  470. ーティングを作るなといっているわけではない。ただ、良く事前に準備も必要だ
  471.  
  472. ろうし、シューティングのお約束もひととおり学んで、なぜこういうお約束なの
  473.  
  474. かを検討した上で、どこをどう取り入れるのか、違うように作るなら、なぜそう
  475.  
  476. するのか、といったところはあらかじめ決めるべきだろう。またお約束と違うこ
  477.  
  478. とフィーチャーにするならば、それが結果として良かったかどうかは、他の人間
  479.  
  480. にやってもらって、その反応を見ながら判断する、というプロセスを踏むのが大
  481.  
  482. 事だろう。
  483.  
  484.  参考になるのは、特に電脳倶楽部では「ぺけベーシック猫の穴」がシューティ
  485.  
  486. ングゲームの基礎部分では非常に参考になるだろうし、今回の山口君の原稿はそ
  487.  
  488. れ以上を求めた場合、参考になるだろう。かなり詳細にシューティングの姿を捉
  489.  
  490. えているので、ここではこれ以上は論考しないことにする。(この章:未完)
  491.  
  492. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  493. (EOF)
  494.